血と黙

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 翌日からは過酷な農作業が待っていた。寮から畑まで車で十分ほど、三池は運転免許を持っていないので、笹原が運転するトラックに同乗させてもらう形になった。  サトウキビ畑は果てが見えない程に広大だった。作業内容は至極シンプルで、サトウキビを刈り、形を整え、束にしてトラックに積んでいく。一日のノルマは一トン。その数字を聞いた三池は早くもげんなりした。 「大変すよね?この仕事」  キビ畑のどこかから声が聞こえた。思わず身構えると、少し先の茂みから若い男が姿を見せた。 「俺、今田周治って言います。昨日、ここに来たばっかで」  今田はそう言って、会釈をした。 「お前も飯塚さんとこの?」 「そうっす、ケチな窃盗して捕まっちまって」 「まぬけだな」 「まったく」そう言って、今田は笑った。「それより、昼決まってます?決まってないなら一緒に飯食いに行きましょうよ」  たまに、人との距離が分からず詰めてくるタイプの人間がいるが、今田が正にこのタイプのようだった。 「構わねえけど」 「他の人も誘いましょうか?三池さんの同居人って?」 「笹原って言ったっけ」 「笹原?ああ、あいつね」今田は何やら含みのあるような言い方をした。「あいつ、変な奴ですよね。目も合わせねえし、全然喋らねえし、携帯ばっかやってるし」 「お前、聞いてるか?あいつのマエ」 「聞いてないっすよ。それこそ昨日来たばっかだし」今田はそう言って肩を竦めた。「まあ、気にはなりますよね。同居人が殺人者とかだったら、マジ最悪」  今田はそう言い、何が楽しいのか馬鹿笑いをした。
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