血と黙

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 仕事終わり、三池は今田に誘われ、島唯一のスナックに顔を出した。 「これ、あたしの名刺」ママはそう言って、名刺にキスをした。「今夜、夢で会えるのを楽しみにしてるわ」  三池はキスマークの付いた名刺を見ながら、「これ何て読むんだ?」 「ああ、それ?愛日って書いてマチカって読むの。良い名前でしょ?」 「いいね」三池は言い、島焼酎に口を付けた。「ママが夢に出てきたら、出演料払わねえとな」  酒を飲み、ママとカラオケを歌い、一度トイレに立って戻ってから、何故だか記憶が曖昧になった。唯一、覚えていたのは客の一人が悪酔いした事、ムショ帰り、社会のゴミという言葉だった。  気付くと三池は見知らぬ男に馬乗りになっていた。男の顔は血だらけで、自分の拳も血だらけだった。 「だから、お前らはゴミなんだよ!」股の下で男が呻いた。「臭え豚の餌を死ぬまで食ってろ!」 「俺は社会のゴミかもしれねえが、だからって女に何してもいいのか?」 「知らねえよ、水商売してる女にゃ、人権なんてねえんだよ」  三池は拳を振りぬいた。骨と骨がぶつかる鈍い音がした。男の口から血が飛び散った。拳の谷間が裂け、そこからも血が噴き出した。  三池は呆然とする店内の中、血だらけの男を放置してカウンター席に腰を下ろした。駐在所のお巡りがくるまで、手持無沙汰を慰めるように煙草に火を点けた。
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