ブーム

7/10
前へ
/55ページ
次へ
「…なんか変だよ、今日のゆに」  何も言わずに、自分を恐れるような顔をして見詰めるゆにを、麻美は心配そうな瞳で見詰め返す。 「…大丈夫?具合い悪いの?」  何時までも何も言わないゆにを、麻美は心配している様子だ。 「…ううん、大丈夫。ごめんね」  気のせいだ。はっきりと悪魔のような声に聞こえた訳ではない。最近、夜更かしばかりして、慢性的な寝不足で、疲れが溜まっているのかもしれない。  ゆにはそう思い、耳に残るような気がする悪魔の幻聴を振り払うように、頭を軽く振った。 「本当に大丈夫?顔色悪かったよ」  そう言った麻美は、泣きそうな顔で自分を見詰めている。  胸が痛かった。こんなにも自分を心配してくれる親友を、気のせいだとは言え、怖いものだと思ってしまった。  こんな事では、大切な親友を失ってしまうかもしれない。 「…ごめんね。大丈夫だよ。考え事してた…本当にごめんね」  麻美にはゆいが謝っている理由は分からないだろう。しかしゆには、一瞬でも親友の事を疑った事を謝りたかったのだ。 「考え事?体は大丈夫なんだよね?」  未だ自分を心配してくれる親友を前に、ゆにの瞳から涙が溢れそうになった。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加