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「それは、まぁ……。美智さんは、これからどうするのですか? 合併に反対なのですよね」
「役員会で決まったものを、どうこうすることなんてできないわ。でも、合併はその後が大変だと思うのよ。大手の銀行だって合併後も旧銀行ごとに派閥をつくって対立しているようだし……。人間関係だけじゃなくて、経理システムや業務システムの統一なども、プライドや縄張り意識がぶつかりあう難しい作業になると思うわ」
「大手だからじゃないですか? ウチとモチズリ建築がそれほど違っているとは思えませんけど……」
「知っている? モチズリ建築には職人さんがいないのよ」
「そうなのですか?」
「ウチは、八割は外注で施工しているけど、2割は社内の職人さんが造っている。原価に労務費があるでしょ。モチズリは100%外注方式なのよ」
「何故、ですか?」
「自社施工の工事は粗利益率が高いのは知っているわよね。それは、今は仕事が豊富だからなの。もし仕事が減ったら、途端に労務費だけで赤字になってしまう。少ない現場に必要以上の職人さんを入れることになるから……。それに比べたら、外注は受注量の増減に対応しやすいのよ。受注が減ったら発注も減らすだけだから……」
「それなら、ウチも外注だけにしたほうが経営は楽になるのですよね?」
「経営の安定性だけのことを言えばそうね。でも、自社施工は、施工することでしか得られないノウハウを得ることができるのよ。緊急事態での小回りも利く。ウチは、そのために自社施工と外注を併用しているの。それが合併でどうなるのか心配だわ」
「工事体制の違いだけで、社内に亀裂が生まれることになるでしょうか?」
「モチズリ建築の社員は、ウチの職人さんたちを見下したりしないかしら?」
美智は、とび職の大村チヅルや重機のオペレーターの仲田弥生の顔を思い浮かべた。
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