謎の3億円

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NOMURA建設の昼休み、総務課と経理課の入った部屋に残るのは弁当を広げる女子社員2名になる。彼女らは比較的口数が少なく、……たとえ話をしたとしても大声を発するようなことはなく、室内はひっそりとしているのが常だった。 その日は、ウイーンと唸るような音を立ててコピー機が動いた。弁当を広げていた総務課資産管理係の佐久間美智は、コピー機の前に立つ総務課長、三井庄司の背中に眼を細めた。 「美智さん、どうかしました?」 経理課の内藤希美が、箸をとめて美智の視線を追う。昨年、中途採用された彼女は、美智より4歳ほど若い既婚者で知識豊かな仕事のできる女だ。 「総務課長が昼食時に一人でコピーを取るのは、午後の役員会で極秘の議題が取り上げられる(しるし)なのよ」 美智は、都市伝説でも語るように小声で教えた。 「へぇー、そうなのですか……。今日の議題は、どんなものですか?」 美智に向いた瞳は、あなたなら知っているのだろう、と言っていた。 コピーを終えた三井が荷物を抱えて足早に事務所を出て行く。美智は彼の姿を眼だけで追った。
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