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「まさか、上場するんじゃ?」
ポロッと言った土橋に、桃香が反応する。
「えっ、上場なんて出来るんですか?」
「新興市場なら、上場の条件は資本金の時価総額が5億円だ。3億増資して公開したら、5億円ぐらいの値はつくかもしれない」
土橋が三井に眼を向ける。
美智は、合併後のNOMURA建設を上場させると畑中が言ったのを思い出した。株の知識も興味もなかったが、モチズリ建築の資本金を加えることを想定すると、上場という目標も現実味があるように思える。
「それなら嬉しいわ」
京子が声を弾ませた。会社の信用が増す株式の上場は、従業員にとっても名誉なことだ。銀行ローンの審査で有利になるなど、実質的なメリットもある。
「違うよ。土橋君、誤解を与えるようなことは言わないでくれ」
三井は苦々しげな反応を見せた。
「それなら何なのです? 三井課長、歯切れが悪いですね」
「来月には正式発表があるだろう。まぁ、その前に噂話が広がると思うけれど、私が発信源になるわけにはいかないからね……」
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