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明かりの点いた窓の前に達したチヅルは中を覗きこんでいたが、やがて窓を開けて室内に滑り込んだ。
「入った……。空き巣だ……」と、弥生。
「大丈夫かしら? あの男がいるのよ」
「そうか。人がいるから空き巣とは言わないよね」
「そういうことじゃなくって……」
「大丈夫よ。チビはすばしっこいから」
2人はチヅルが忍び込んだ窓をじっと見つめていた。そこには僅かな変化もなく、まるで時間が止まったようだ。
「美智さん」
声と共にトントンと腕をつつかれた感触がある。視線を落とすとチヅルがいた。
「ヒャ……」両手で口を抑えた。
「チビ!」弥生も目を丸くしている。
「鍵を開けたよ」
チヅルが建物の入り口を指した。ドアが開いたままだった。
「監査役はいなかったの?」
「男が寝ていただけだよ」
弥生が屈みこみ、チヅルの両肩を握って尋ねる。
「降りてくる途中に部屋はなかった? ここにいるはずなのよ」
「部屋が多くてわからないよ。それにあの男がいたし……」
美智は恐る恐る出入り口に近づいた。建物の奥からドカドカ走る足音がする。
「待ちやがれ。俺たちの事務所に忍び込むとはいい度胸だ」
あの男の声が反響している。
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