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「先生、これを――」
あたしは一枚の写真を、丸いテーブルの上を滑らせて、対面の男へと差し出した。
写真に写っているのは、小坂ユカ、三十二歳。あたしと愛人関係にある小坂冬馬の妻だ。
「この女を呪い殺してほしいんです。先生なら、その……こういうことは、お得意と聞きましたので」
対面に腰かけた男は、つまらなさそうな顔で、しばらくの間、自分の前に置かれた写真を見おろしていた。
男の名前は、斑尾幻葉(まだらおげんよう)。五十代にも見えるし、三十代といっても通用する、年齢不詳の男だ。くせなのか、泣いているように顔をゆがめている。
彼の本業は占い師だが、裏では呪殺を請け負う凄腕の呪術師という話だった。
ここは斑尾の仕事部屋だ。ログハウスを思わせる木目調の内装の、十畳くらいに相当する広めの部屋だ。カーテンを閉め切り、ろうそくを模したLED照明が、部屋の数か所に置かれ、部屋全体を独特のムードに染め上げている。
斑尾は気の進まない顔で、それでも一応は、といった感じでようやく写真を手に取って、ながめた。
そして数秒の後に、写真をテーブルにもどした。
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