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「これは、無理ですね」
「なぜですか? お金なら用意します」
呪殺の相場は百万円とも二百万円とも言われているらしい。それくらいなら、貯金をおろせばなんとかなる。
「お金の問題じゃありませんよ」
斑尾はそう言いながら、あたしの顔から体へと視線を下げた。胸から始まり、あたしの上半身を舐めまわすように見つめた。
あたしは椅子に座ったまま、身構えた。
自慢ではないけれど、あたしの胸は大きいし、ウェストのくびれもきれいに出ている。男たちのイヤラシイ視線にさらされるのはしょっちゅうだ。
今はゆったりとしたニットを着て、体の線が目立たないようにしている。それでも、こんなほの暗い部屋で、男とふたりきりで向かい合って、イヤラシイ目で見られると、身の危険を感じる。
「お金の問題じゃなくてね」
と、斑尾はもう一度言った。「この写真の女、もう死んでいるでしょ?」
「あ……」
「違いますか? もう死んでいるんでしょ? 死んでしまった女を、今さら呪い殺すなんて、できませんよ」
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