ナニゲッティにする?

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ナニゲッティにする?

 お腹が空いた。  とても唐突だが、正確にはお腹が減ってきたのだ。  朝ご飯はちゃんと食べる派なのでしっかり取ってきたけど、やっぱりお昼が近くなってくるとどうにもお腹が減る。健康優良児ゆえ。 「おなか減ったねぇ」  くう、とお腹の音すら返事をする。あたしは隣にいる親友に声をかけたつもりだったのに、正に自問自答。 「そうだね。何でもいいけど、何ゲッティにする?」 「何ゲッティって!」  思わず心の中の関西人がうなりをあげた裏拳でツッコミを入れていた。  そのツッコミは空を切った。  あたしは、自分の部屋のベッドの上だった。  夢を見ていたらしい。明晰夢とかいうやつだ。現実に近くて、まぎらわしい。 「……ツッコミで目が覚めるとか……」  あり得ないんですけど、などと思いつつ、起きる。スマホを見れば今日の予定の通知。そうだ。今日は親友殿とお買い物に行くのだ。 「変な夢だったなぁ」  とは言いつつも、しっかりとおめかし(こういうとおばあちゃんみたいと言われる)をして、あたしは姿見で自分の姿をチェックする。うん。今日もかわいい。かわいいってことは無敵だ。  そしてあたしは家の鍵を閉めると、意気揚々と待ち合わせ場所へと向かったのだった。 「お待たせ!」 「待ってないよー」  親友であるみっちゃんは、今日ものほほんとしてらっしゃる。なんというか、この空気感は真似したくても出来るものではない。いわゆる天然ものだ。 「でもお腹は減った」 「はやくない?」 「えー、めーはそう思わないの?」  めーはあたしのことだ。羊の泣き声みたいでかわいいと思っている。 「まぁ、思わなくもない」 「でしょー? 何でもいいよ。ナニゲッティにする?」  夢とまったく同じ言葉を言われて、あたしの思考が一瞬止まった。 「チルル・ティウァレでもいいし、パウェガでもいいなー。あとヴァウェウパは最近食べてないよねー」  さらに、止まった。  何だ、それは。あたしの知らない言葉が、あたしの知っている人の口からすらすらと出てくる。 「クォエアム・ジプラはどうかなぁ。ねー、めー」 「ぇ?」  思わず出た声はすごくかすれていた。あれ? あたし、このひと、本当に、知ってるひと? 「ナニゲッティにする?」
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