栞 side:1

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栞 side:1

「……ハクとあたしがデキている?」 目の前の女の言葉にあたしは眉をひそめて呟いた。 放課後の教室の隅で。 ロッカーの前で荷物を取り出そうとするあたしと、出口を塞ぐように立つ女子二人組。 申し訳程度の本当にナチュラルメイクのあたしに対し、二人はしっかり塗って盛ったメイク。 元の顔がわからない。 そして。それより、あんたたち誰? クラスメイト……だっけ? 「そうよ、私聞いたのよ!ハク様とあんたが実は血の繋がってない兄妹だって……!」 「ーーちょっと待って」 ユルフワパーマの女が興奮して叫ぶのをあたしは止めた。 「それ、誰に聞いたの?」 あたしは低い声でボソリと言った。 「眞中さんと同じ中学の子達が言ってたのよ!ハク様の卒アルが手に入ったからって、見せてもらった時にーー」 またか。 ハク……兄の卒業アルバムはプレミア価格で売買されているらしい。 眞中 琥珀(まなか こはく)。 あたしの兄。 超絶と言っても過言ではない美貌の自由人。 あたしが保育園の時に、親同士が再婚し、連れ子のあたし達は兄妹になった。 「再婚したのは本当よ。でも、あたし達は普通の兄妹(きょうだい)だから。変な噂たてられたら迷惑!」 あたしはそう言い放つと、ロッカーから荷物を取り出す。 「じゃあ何でいつも一緒に学校に来るのよ!」 あたしの背中に投げつけられる悔しそうな声。 「兄妹(きょうだい)だからよ。あんた達と居るよりも良いに決まってるでしょ?」 あたしのセリフに名前も知らないクラスメイトは唇をぎりぎりと噛む。 あたしは足早に昇降口に向かった。 下駄箱の陰でひっそりと嗤う。 ……あたしは、さっきウソをついた。 あたし、眞中 栞(まなか しおり)はハクを兄だとは思ってはいない。 でも、そんなことを名前も知らないアイツらにワザワザ教えてやる必要はない。 これは……あたしだけの、秘密。 あたしは、出会った時から琥珀に……兄に恋をしていた。
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