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アイナは皆に贈られた指輪を見せて、ラウレンスはアイナの肩を支える。
2人の笑顔が輝いた儀式が終われば、ラウレンスはフレイトにアイナのことを乗せてその会場を後にした。
王都の外れでフレイトから降りれば、森に近いところにクロスト村では当たり前のように建てられていた朝顔型の魔道具のついた建物が建っている。
そして、薬草店の看板が掲げられている。
「アイナ。今日から私たちの家だ」
「え?」
驚いたアイナに後ろから抱きしめられ、額に優しく唇が落とされる。
「アイナは薬作りをしたいのだろう?」
「ラウレンス」
アイナはラウレンスの首に手を回して、ギュッと抱きしめた。
「ありがとうラウレンス」
アイナは鼻先に触れた後にラウレンスの唇に口づけをした。
ラウレンスはアイナの腰にまわしていた手に力を込めると、深く優しく唇に触れていく。
離れた唇を見つめていると、ラウレンスが耳元で囁く。
「中に入ろう」
アイナは腰に手を当てられたまま店の中へと入る。
新しい店はクロスト村に住んでいた時とほぼ変わらぬ間取りで、カウンターの奥には調合部屋が設けられていた。
そして、そこに調合に必要な道具一式が置かれている。そして、そこには一枚の手紙が置かれていた。
「これって……」
アイナが手紙を読めば、フロートの手跡で書かれている。
「ラウレンス。この道具は婆様が?」
「ああ、クロスト村ではもう使わないそうだ。使い慣れた物の方がいいのだろう」
「ええ、それに……一緒にここで……」
ラウレンスは頷けば、店の中に小さな鐘の音が響く。
そこに現れたのはリュシアンとフロートだった。
「私がいないとね。まだまだアイナは見習いだからね」
「婆様」
アイナはフロートの元へと走り抱きついた。
「また一緒に過ごせるのですね?」
「ああ、住みはしないが、時々顔を出そうとは思っているよ」
寂しさを感じていたアイナには嬉しい事だった。
ラウレンスも優しく見守ってくれている。
「さあ、フロート。行くぞ」
リュシアンが手を差し伸べれば、フロートはその手を取り、ゆっくりと歩いていく。
「アイナ。幸せになるんだよ」
フロートは振り返らずに肩を揺らして店の戸口へと向かう。
「ありがとう婆様」
アイナも涙を流すと、そっとラウレンスがアイナの肩に触れた。
ラウレンスの手に触れて、フロートが店から出ていく姿を見守った。
「ラウレンス……」
止まらない涙をラウレンスが拭ってくれる。
同じ王都にいて会えると分かってはいたが、涙が止まらなくなってしまう。
新たな生活で離れてしまう寂しさが今になってこみ上げてきた。
しかし、アイナはラウレンスの顔を見上げる。
愛しい人とようやく結ばれたのだ。
出会いは花を積んでいる時、今思えば一目惚れだったのだと思う。白い騎獣に跨り、アイナのことを心配してそばにいてくれた。
一時は香油を求めてきた客の一人として距離を置こうと思っていたが、ラウレンスもアイナのことを求めてくれていた。
贈られた首飾りに光る指輪、何度もアイナの事を救ってくれた愛しい存在の温もりに甘える。
アイナはゆっくりと瞼を閉じると、優しく唇を交えた。
ラウレンスの唇から離れれば、今度は目元に唇が落ちてくる。
「ずっとそばにいてくれ」
指元の指輪へと口づけがなされる。
「はい。そばにいます」
ラウレンスはアイナの手を握ったまま、眉根を寄せた。
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