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「ははは! んな訳がねぇだろうが!」
オレの喧嘩相手野郎が笑い飛ばしながら、落ちたスマホを拾いあげる。
「……ほーれ、見てみろ。何も無ぇぞ?」
そうして突き出した画面には、さっきの入力内容がすっかり消えていた。
……あ、れ? そんな筈は無ぇんだが……。
確かに入力した筈なのにな。それともどうにかしてリセットされたか? あんなに頑張ったのによ!
「あ……ホントだ。何も入力されてないな」
委員長が、恐る恐る画面を覗き込む。
「何か、変な幻覚でも見たんじゃないの?」
オレの死に、ひとりトイレで泣いてくれた聡美が眉をひそめる。
いや、幻覚とかじゃなくてホントに入力したんだが……まさか!
オレは喧嘩相手野郎の側に幽体を寄せて、心の声に耳を傾けた。
《……やれやれ、まさか本当に『たすけて』と書いてあるたぁ思わなかったな。とっさに消して正解ってもんだぜ! 皆んなが怖がっちまうからな!》
やめろぉぉぉ! そんな所で無用な『男気』とか発揮しなくてイイんだよぉぉ!
くそ……っ! あんなに苦労して入力したってのに! まさかそういう邪魔が入るたぁ思ってもみなかったぜ!
「いやぁ……やっぱり見間違いだったのかなぁ。勝手に入力されたと思ったけどなぁ?」
委員長は、まだ納得が行ってないようだ。
……よし、頼むぞ……っ! 何とかここは踏ん張ってくれ!
苦しい時の神頼みってヤツではあるが……。
するとそこへ、担任が少し顔を強張らせてやってきた。
「何かあったのか? ふん……ふん……スマホに変な入力が? うーん、もしかすると『本物』なのかな」
そう言って腕組みをする。
そうそう、本物なんだよ!
「実はな、さっき集合写真を撮ったカメラマンのアシスタントさんから聞いたんだが……画像に『人の顔』みたいな物が写ったそうなんだ。レタッチで消したそうだなんだが……」
「ええ!本当ですか!?」
同級生達が、一斉に目を丸くする。
お? もしかして作戦成功だったのか?
「ああそうだ。昨晩、ここの職員が『廊下で影のようなものを見た』とも言ってたしな。もしかすると、そのスマホの文字も単なる見間違では無いのかも知れん」
よしっ、やった!
オレは渾身のガッツポーズを繰り出した。
やー、嬉しいなぁ。オレの必死の努力がムダに終わらなくてよ。……つーか文字とおり『必ず死んでる』んですけど!
「これは……もしかして。何しろ田中のヤツは『殺された』んだしな……」
担任が呟いた。
おお、頼むぞ……っ!
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