オレの思い残し

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オレの思い残し

「もしかして……何なんでしょうか」  聡美が、おずおずと尋ねる。 「うん。人間が死ぬと『想いだけが残る』事があると知り合いの僧侶から聞いた事がある。もしかすると、田中は『何か言いたい事』があるんじゃないだろうか?」  よっしゃぁぁ!  すげーぜ! よくそこに気づいてくれた! 流石先生だぜ! 「言いたい事かぁ……スマホの文字は『たすけて』だったんだろ? もしかして田中のヤツ、自分が『死んだ』ってのを、分かってねぇんじゃねぇのか?」  喧嘩相手野郎が首を捻る。  アホか! いくら何でもそれくらいは分かるわボケ! ……指導員のオッサンに教えてもらっているからな。 「ありますね、それ。アイツ馬鹿だから、今なら助かって生き返る方法があるんじゃないかって考えてても不思議じゃない」  委員長のヤツが、うんうんと頷いている。  ……この野郎め。まさか死んでまでディスられるとは思って無かったな。オレはそこまで馬鹿かよ! 「仮にそうでないのだとしたら、だ」  担任が皆んなを見渡す。 「或いは、犯人が誰なのかを……伝えようとしてるとか?」    ……惜しい! そうじゃねぇ! 近いけど、オレも犯人を知らねぇんだよ! だから犯人を探して欲しいんだよ! 「その可能性はありますね……何しろ殺された当人なんですから、犯人の顔を見ている可能性があります」  委員長のヤツが相槌を打つが。  ……すまん、オレ自身『殺された』のを、昨晩知ったばかりだからな。  何か申し訳なくていけないが。  と、その時だった。 「……うーむ。何やら複雑なご事情がおありのようですな」  同級生達の背後から声がする。 「え?どなたですか」  声のする方に顔を向けると、そこにはひとりの坊主が立っていた。  葬式で読経を上げていた3人組のひとりだろう。メインボーカルは焼き場に行ったから、サイドボーカルの片割れだ。 「おお、これ失礼。拙僧は天源と申す僧でございます。本日はたまたま縁あって田中家のご葬儀に呼ばれておりましたが、拙僧はこれでも修験道で長年鍛えた身でございますれば、もしかするとお役に立てるのでは……と申し出た次第でありまして」  そう言って仰々しく合掌して頭を下げる。 「『役に立つ』と言われますと……」  担任が怪訝な顔で坊主をジロジロと見る。 「ええ、拙僧は『口寄せ』を得意としておりますゆえ」
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