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「口寄せ? 口を寄せてどうすんだ?」
喧嘩相手野郎が、はぁ?って顔をしている。
「いえいえ……『口を寄せる』のではなく『口を使って寄せる』即ち、死者の想いを拙僧の口から語るという術にございます。如何でございましょうか? 何、お代を頂戴するとは申しません。お試し頂ければ何か分かるかも知れませんぞ」
坊主の野郎、自信たっぷりだが……オレはどうすりゃいいんだ?
何しろ『口寄せ』?とかで呼びつけられる経験なんてした事が無ぇしよ……当然だけど。
とにかく、ここで待ってりゃぁいいのかな? どうせ『呼ばれる』ってんなら、その方が面倒がなくていいだろうしよ。
「いやまぁ……もしも『それが出来る』という事でございましたら。しかし、そんな事が本当に出来るので?」
担任はまだ半信半疑だ。
「当然ですとも。皆さんにはお分かりにならんでしょうが、拙僧には分かる。『彼』はまだこの近くに漂っておるのです」
おお?これは期待出来そうか? 今度はチャンと喋る機会がありそうだな。
オレは少しワクワクしてきた。
あーあー、チャンとしゃべれるかな? 何だか緊張してきたぜ!
「では……参ります」
坊主が仰々しく手を複雑に組み、ブヅブツと何やら呪文みたいな言葉を唱え始めた。
「……臨!兵!闘!者!皆!陳!列!在!前……っ!」
額に皺を寄せ、身体を微かに震わせながら大声で叫ぶ。
同級生達はもとより、その場に残っていた連中の全員が、固唾を呑んで見守っている。
「……来た……来ました」
坊主が低く呟く。
へ?……いや、さっきからここに居ますけど?
「く……苦しい……苦しい……っ!」
坊主がうめき出す。
……何なに?何か始まった? オレ別に何ともないけど。ええっと、オレ、いつの間にか呼ばれてたか?
「おお、何か来たようだぞ!」
周囲がどよめく。
「……ああ……苦しい……苦しい」
坊主がブルブルと震えてやがるけど。
あいや、別に『苦しい』とかそういうのは無いんですが……あのー、すいません。オレ、まだ何もして無いんスけどぉ?
つーか、アレか? ここは空気を読まないといけない雰囲気なのか?
「は……犯人は……犯人はぁぁ!」
坊主が身体をいっそうに震わせて、額を汗を浮かべながら声を上げる。
うーむ。まぁ……一生懸命なのは伝わるけどさぁ……。
真剣そうな坊主とは対照的に、オレは次第にバカバカしくなってきた。
だが、オーディエンス達はその光景に期待を寄せているようだ。
「おお!何か語るのかっ!」
……まったく、白けるぜ。
「見える……見える……イメージが見える……暗いところで……誰かがやってくる……」
くそが! 何が『やってくる』だよ、まったく!
オレは段々ムカっ腹が立ってきた。
仕方ねぇ! こうなったら、こっちも最後の手段だ!
どうにも遠慮してたけど、最強の『心霊現象』でそのクソ坊主を撃破してやる!
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