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俺の方を向きながらも、彼を背中で意識している朋子も、そこを動く気は無かっただろう。
ああ、馬鹿だな。二人とも。
それから、どちらの顔も見えてしまうこの場所に立つ俺も……馬鹿だな。
どちらも見えたなら、俺が動くしかないじゃないか。
せめて……彼の顔が見えなかったら……
……馬鹿だな。そう呟いた。
俺に背を向けて、彼の元へ走り寄る朋子が見えない様に俺は歩き出す。
少し離れた場所で止まると空を見上げて
……馬鹿だな。
もう一度呟いた。
俺は自分で対角を動いたんだ。
なかなかよくやったじゃないか。
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