煙突そうじ屋さん

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煙突そうじ屋さん

時は近代。 とある国に、ひとりの煙突掃除屋の青年がいました。歳は二十代後半でしょうか。 今日は初めての家のお掃除の日です。 スルスル ピカピカ スルスル ピカピカ 青年は、煙突の中を綺麗にしていきます。 下りた先、家の中には二十は年少の女の子がひとりいました。 体が弱くて、学校は休みがちなのだそうです。 女の子は、 『友達がほしい』 『勉強がしたい』 そう言いました。 青年は読み書きができません。でも友達になる約束をしました。 女の子は大喜び。 ススまみれの青年の来る日が楽しみで仕方ありません。 ある日、ママの大切にしていた指輪がなくなってしまいました。 ママは青年を疑い、警察には言いませんでしたが仕事をやめさせてしまいました。 女の子は悲しみます。 やがて、指輪はママの服の中から見つかりました。 青年は、読み書きの勉強を始めました。 たくさん、たくさん、勉強をしました。 若い人たちに混ざり、大学に通うまでになりました。 時は流れて……。 青年は国で十指に入る、偉い人になりました。 ススではない、黒い服に寄り添うのは、二十も年少の若い奥さま。 あの日の女の子は、ずっとずっと青年を忘れず、友達から秘書に。それから恋人に。そうして花嫁になったのです。 ふたりの出会いは、ふたりだけの秘密です。 END. Thank You!
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