哀愁のワルツ

サキトさん

　実家の片づけを終え、東京に戻ってから、サキトという名前だけを手掛かりに俺はネットでサキトさんを見つけられないか検索した。TwitterやFacebook等のSNS、カメラや写真関連のサイトをしらみつぶしに調べていくうちに、SAKITOという名前で写真家のサイトに書き込みをしている人物を発見する。いろいろ遠回りしたが、とうとう直接、彼に問い合わせることができた。

　あのサキトさんだった。マリンさんが恋するサキトさんだった。その事実が判明した段階で、俺はなぜか号泣した。PCの前で泣きながら、俺はマリンさんが今でもサキトさんを待ち続けていることを伝えた。最高の場所で写真を撮ってもらう日を待っているのだと伝えた。

　サキトさんはアメリカで小鳥や昆虫など小さな生き物のカメラマンとして活躍していた。80歳になる現在も現役で仕事を続けているという。
「マリンが元気なら航空券を送る。最高の場所でマリンの撮影会の続きをしたい。僕はずっと独身だった。僕の愛する女性はマリンだけだ。」

　俺はサキトさんのメールをプリントアウトしてマリンさんに送った。