哀愁のワルツ

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哀愁のワルツ

 マリンさんはアメリカへ行った。行って半月くらい経った頃、やっと電話がかかってきた。 「こっちに住むことにした。来月、結婚するの。結婚式の写真できたらメールで送るから。最高の場所って、サキトさんの隣ってことだった。それ以上に最高の場所なんて世界中探してもないわ。今、とっても幸せ。ありがとう。あなたのお陰で素晴らしい人生になった。サキトさんは昔から素敵だったけど、今はもっと素敵。最高のカメラマン。最高の恋人。そして、やっと・・・・最高の夫になる・・・」  マリンさんは嬉しくて泣いていた。俺はサキトさんとも電話で話した。 「僕を見つけてくれて本当にありがとう。心から感謝します。マリンは昔と少しも変わらない。素直で、甘えん坊で、泣き虫で、僕を困らせるくらい僕を愛してくれる。きっと幸せにします。大切にします。そのうち日本に遊びに行きます。あなたも時間が許すなら、ぜひこちらに遊びにいらして下さい。マリンの息子は僕の息子だから。」  マリンさんとサキトさん、俺、の三人のこの先の人生を思う。  マリンさん60歳。サキトさん80歳。俺36歳独身。  哀愁ただよう三拍子のワルツみたいな三人の未来が妙に愛おしい。  結局、俺が苦労して片付けた実家は、改築されないまま空き家になっている。     完
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