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初恋
マリンの家のすぐ近くに『ロマン写真館』はあった。マリンは七五三とか小学校に入学する時などは必ず、その写真館で写真を撮った。
マリンが小学4年生の時、どこか外国で働いていたと噂される写真館の長男が帰って来た。写真館のおじさんの体調が優れないので後継ぎをするために戻って来たらしかった。
学校帰りに近くの沼に寄り道してアヤメを抜き取ろうとしたマリンは、アヤメが思いのほか簡単には取れなかったのと、沼の底が不安定だったために、沼の中で転び泥まみれになっていた時、知らないお兄さんが抱き上げてくれた。それが写真館の長男、サキトさんだった。写真屋のおじさんは車好きでサーキットに因んで咲人と書いてサキトという名前を長男につけた。
サキトさんに助けてもらってから、マリンはサキトさんが大好きになった。サキトさんに会いたいために、写真を撮って現像してもらいに行く、という趣味にハマった。
マリンは家にあったカメラを『ロマン写真館』に持って行き、サキトさんに、カメラの機能について細かく質問したり、教わった内容をノートに書き留めたりした。同時に、サキトさんに褒められたくて、いい写真を撮るために絵の勉強をしたり写真の本を読んだりした。
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