写偽

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青年は画像を改めて保存した後、その足でキャンプ場に向かうのであった。キャンプ場にたどり着いた青年は集合写真を撮ってもらった場所と同じ位置に立ち、風景写真を撮影した。集合写真との違いは季節とそこに皆がいるかどうかの二つである。 青年は帰宅し、再び写真改竄作業に入った。同じ位置にある背景の川をそのまま貼り付けてみると違和感は無い。こうして、青年は集合写真から元・姉の姿のみを消すことに成功した。 数日後、青年は母親を家に呼び、写真の出来を確かめてもらうことにした。 「凄いじゃない! 本当に影も形もないじゃない」 「母さんがこうしてくれって言ったから頑張ったんですよ」 「ご苦労だったね」 集合写真から元・姉は消えた。写真とは真を写すものである。だが、加工し歪めて元・姉の姿を消したこれは写真と言えるのだろうか。 写っているのは母親が忌み嫌うものを消した偽りのもの、これは写偽(シャギ)と呼ぶに相応しいだろう。しかし、この写真を写した当時は楽しかったことは間違いない、これを否定するような真似をするぐらいに母親は元・姉を憎んでいたのか。息子としてそれに合わせてやろう。青年は自分に義理の姉がいたことを記憶から消去するように努めた。
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