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「色々と驚かせされたよ。男に同棲相手がいるって話があったろ? なんとその同棲相手が、事故の被害にあった女性だったらしい」
「え?」
口にした瞬間、チクリとお腹の下の辺りに不自然な痛みが走る。
「あの日は二人の間で大きな喧嘩があったようでな。口論の末に家を飛び出していった彼女の車を止めるために、男はあんな騒動を」
「そんな事って」
おかしい。お腹がどんどん痛くなっていく。
「よくいる気性の荒いタイプの男なんだろうよ。彼女が逃げ出した事を考えると、暴力を振るう事もあったかもしれない」
呼吸が荒くなり、顔には脂汗が浮かぶ。体の内側で、重たく硬い物が膨れ上がっていくような感覚がある。
「喧嘩の原因も気持ちのいいものではなくてな。彼女のお腹にできた子供を、男が下ろす事を強要し、彼女がそれを拒んだ事が発端だったようだ」
「そ、それじゃあ……」
「ああ。事故にあった時、あの女性の体にはもう一つの命が宿っていた」
ズキン。と強烈な痛みが私を襲った。
ソファーにすらまともに座っていられなくなり、お腹を抱えたまま、床の上に倒れ込む。
スマホから沼田の声が聞こえている。しかし言葉として理解する余裕はない。
あまりの痛みで視界が白ばみ、意識が遠退いていく。
カシャッ。
背後で、シャッター音が聞こえた。
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