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おやすみなさい
こころ君がぼくにさよならを言うと、急に強い風が吹いてきて、思わず倒れ込んでしまった。
気が付くと手元に写真はなくて、その後暗くなるまで探したけど、結局最後まで見つからなかった。
家に帰るとお母さんがすごく怒っていて、暗くなるまで帰ってこないからすごく心配したと言っていた。
その日の夜に、ぼくはお母さんに聞いてみた。
「お母さん。写真とお話しするのって変かな?」
「え?… そうねぇ…」
お母さんはかなり長い間考え込んでいたけれど、にっこりと笑ってこう答えた。
「これ!お父さんの写真!」
「え?う、うん。お父さんの写真だね」
お母さんは、お父さんと今よりも小さいぼくが一緒に写っている写真を見せてきた。
「お母さんね。ちょっとだけ寂しい時はこの写真とお話しするの」
「え!?そうなの?」
「そうなの!そうするとね。楽しいことを思い出したりして、ちょっと元気がもらえるの!そしたらまた頑張ろう!って思えるのよ」
「そうなんだ…」
「かがみ。お友達から変なのって言われちゃっても、あなたは正しいって思うことをしていいのよ」
「お母さんは間違ってたら、注意してくれる?」
「間違ってたらね。でも、そんなことしちゃダメよ?」
「うん!」
「それじゃあもう寝ましょう。おやすみなさい」
「うん。 あっ!お母さん!お父さんのカメラってある?」
「カメラ?えぇ…お父さんの部屋に置いたままよ」
「使ってもいい?」
「…もちろん」
「ありがと!」
ぼくはすぐにお父さんの部屋に行って、カメラを探した。
撮るとすぐに写真が出てくるカメラで、お父さんが大切にしていたものだ。
ぼくは電気を消してそのカメラでお父さんの部屋の写真を撮った。
少しすると、ガーっとカメラから写真が出てきた。そこには真っ暗になったお父さんの部屋が写っていた。
ぼくは自分の部屋に戻って、じっとその写真を見ていたがお父さんの部屋が写っているだけだった。
だんだん眠くなってきたのでぼくは諦めてベッドに向かった。
「おやすみなさい」
『うん。おやすみなさい』
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