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なんだろうね?
ぼくは写真をじっと見つめた。
ちょっと怖かったから離れていたけど、だんだん興味が湧いてきて、いつの間にか手にとって写真を覗き込んでいた。
さっきまでは何もない暗い部屋が映っていたはずなのに、今はうっすらとぼくと同じくらいの歳の男の子がいた。
「君が話しかけてきたの?」
『そうだよ。僕はこころって言うんだ。君はなんて言うの?』
「ぼくはかがみって言います。お父さんに立派な人になれるように鑑(かがみ)っていう名前を付けてもらいました」
『そうなんだ!カッコいい名前だね!僕はね。人のこころが分かるようにって意味があるんだ』
「そうなんだ。かっこいいね」
いつも自己紹介する時みたいに話したら、こころ君も同じように自己紹介してきた。
「それで…どうして写真がしゃべってるの?」
ぼくはどうしてもそれが知りたくて聞いてみた。話す写真なんて見たことがない。
『え?どうしてって…うーん… それじゃあ、かがみ君はどうしてしゃべってるの?』
「ぼくは、しゃべりたいから…」
『僕も君とおはなししたいよ!』
「そうじゃなくて…」
うまく伝えられなかったみたいだ。
もう一度聞いてみる。
「普通は写真は話さないから、どうして話してるのか気になったんだ」
『そうなんだ。でも僕はおはなしできているし、何も変なことはないと思うよ?』
「変だよ! だって普通は写真はしゃべらないもん!」
友達のみんなだって変だっていうはず。
たしかにこうしてお話しできているけれど、普通は写真はしゃべらないから。
『それじゃあ、僕がかがみ君とおはなしするのは変なの?』
「変だよ!みんなが知ったらびっくりするよ!」
『みんなって、お友達とか?』
「友達もお母さんもみんなだよ」
『かがみ君はびっくりしたの?』
「当たり前だよ!すごくびっくりした!」
『そうなの?かがみ君は僕のこと、変じゃないって思ってると思ってた』
「え?」
『だって、変だって思ったなら走って帰っちゃうかもしれないけど、かがみ君は今もこうしておはなししてくれているし、僕は君に変だと思われてるなんて思わなかったな』
「こころ君にとっては、僕は変じゃないって思ってるように見えたの?」
『そうだよ』
「で、でも… 普通はみんな変だって言うと思うから…」
『普通ってなんだろうね?』
「え?」
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