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夏生くんがいなかったら、きっと毎日ひとりぼっちで1年7組に通っていた。
毎日、毎日。
出るかも分からない幽霊の存在にすがって、桜の花が綺麗なことに気付きもしないで……。
美琴と康太の仲を羨んで、嫌な気持ちばかりを膨らませて。
早く、願いを叶えて……って。
ずっと、毎日。
「今日ね、康太……好きな人と、普通に話せたの。昨日までなら、気まずくて苦しくて、辛いだけだったのに。……ちゃんと笑えたの」
思い出すと、胸の奥が少し痛むけど。
夏生くんの顔を見て、すぐにその感情にも蓋をする。
「ひとりで悩んでるだけなら、きっと無理だった。夏生くんのおかげだよ」
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