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きっと、私たちは今、同じ風景を見ている。
使われることのない、机。
私たち以外、誰もいない。
窓から吹き抜ける風が舞って、そこから見えるうす紅色の桜は満開。
「あるよ、願いごと」
窓際で桜を見ていた夏生くんが、振り返ったような気がした。
だけどやっぱりそれは幻で。
「放課後、会えればそれだけでいいと思ってた。我慢出来ると思ってたんだ」
それでも君は、ここにいる。
ちゃんと、私の目の前にいる。
「でも本当は、俺は……小雪とずっと一緒にいたい」
やっと本音を言ってくれた夏生くんは、苦しそうだった。
願いを口にしているのに、懺悔をしているようで。
私は、そんな彼の手を決して離さないように、涙目で笑った。
「すごいね。私が願いを叶える番なのに、また夏生くんが私の願いを叶えてくれた」
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