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美琴の背中から、目をそらす。
マナとハルカが笑い合っている姿がすぐに目に入って、私はまた美琴に視線を戻した。
『私まで悪口言われるのが怖くて』
昨日、夏生くんにこぼした弱音。
その気持ちは、今も変わってはいない。
でも、やる気になれば出せる勇気くらいは、私にだってあるはず。
目を閉じて、ゆっくり息を吐く。
大丈夫。
夏生くんの微笑みが、背中を押してくれる。
「っ……、美琴!」
少し大きく呼びかけた私の声に、美琴が振り返る。
涙目になっている。
昨日も、見えないところで、そうだったのかな……。
「また……あとでね」
小さく手を振ると、美琴は驚いたように口を開き、そしてすぐに笑って頷いた。
「うん……っ!」
美琴が教室から出ていくのを見送って、胸を撫で下ろす。
たったあれだけの言葉で、変な汗出たかも……。
恐る恐る、マナとハルカのふたりに向き直る。
ふたりは、朝も不満そうな顔をしていたし、きっと今だって……。
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