そこにある愛

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手を絡められたまま向かうは彼の部屋――― 昨夜から今朝にかけて愛を確かめ合っていたベッドを見た私はまたもや心臓がドキリとしてしまう。 祐「…ちょっと待ってて……」    絡めていた手を離すと彼がクローゼットへと向かっていく。 (…あっ……あのクローゼットは……) 彼の開けているそのクローゼットは毎回驚くようなものが出てくる。 今日は一体何が出てくるのだろうか。 またアロママッサージのオイルというのも違うような気がする。 でも、いずれにせよ、彼のことだ。 今日も驚くようなものを出してくることには間違いないだろう。 祐「…ん、これだ……」 どうやらそれを見つけたようだ。 そして、ソレを手にこちらへやってくる。 祐「…梨乃……これに着替えてくれる?」 手渡されたものは、どこかのショップの紙袋。 あまりブランドなどに興味のない私にはそれが何だか想像がつかない。 梨乃「…ゆうちゃん……これ何?」 祐「…さぁ……なんだろうね。ん、気に入ってくれればいいんだけど……」 触った感じ、その柔らかさから衣服だと分かる。 祐「…それ、着て俺に見せて?」 梨乃「え?」 わざわざ着替えて行為に及ぶということなのだろうか。 となると、もしや、これはコスプレ用の服!? 紙袋の厚みから考えれば、何となくそんな感じがする。 いや、それより、彼にこんな趣味があったとは。 祐「…梨乃が着るのを楽しみにしていたんだ。ん、嫌かな?」 期待に胸を含まらせたような顔をした彼がそこにはいる。 そんな彼の期待を裏切ることなんて私にはできそうもない。 梨乃「……分かった……ゆうちゃんが望むのなら……」 紙袋を握り締めた。 (…コスプレ……私がコスプレ……うぅ……) まさかこんな日がくるとは思いもしなかった。 でも――――…… 彼がそれを望むのなら応えるのもパートナーの役目。 どうやら、私は覚悟を決めなければいけないようである。 そして、私は思い切ってその紙袋を開け―――…
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