逆鱗

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彼の手がそっと私の手に重ねられた。 祐「…梨乃……無理しなくていいんだ。俺は梨乃を大事にしたい。…俺は……梨乃だけは失いたくない……」 いつも堂々として全く隙のないパーフェクトな彼。 そんな彼が弱さを見せている? 今に至るまで失ったものも多い彼。 自身の母親、愛する人……その時の喪失感を彼に思い出させてしまっている? 梨乃「…ゆうちゃん……梨乃は絶対に離れないよ…?」 私はその手を握り返した。 例えどんなことがあっても彼から離れない。 そう。 私には彼しかいない。 離れたくないからこそ、彼と繋がりをもつことで確実な愛を手に入れたかった。 この年齢差なんて指摘されないくらいの愛を――― 祐「…梨乃に…もしものことがあったらって。まして……俺が梨乃を傷つけてしまうだなんてさ……だからさ、俺、もうあんな風に梨乃を……」 私を想ってくれていることが嬉しかった。 だけど……だからといって、そんな風に私を傷つけないように距離を置かれるのが怖かった。 梨乃「ゆうちゃん……それが梨乃は嫌だったのっ。…私は……やっぱりゆうちゃんと……」 と、その時だった。 運転席のドアがガチャリと音を立てて―――……
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