逆鱗

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診察室へ入ってドクターと向き合った。 ドクター「改めまして私、遠野(とおの)と言います。藤沢…梨乃さんですね?」 梨乃「はい。」 名前は既に伝えられていたのだろう。 PC上には私のカルテが既に出来上がっている。 ドクター「大体のことは坊ちゃんから聞いています。ですが、先ほども言ったように貴方様からお話を聞きたい。お話できる範囲で構わないので、今日に至るまでの経過を教えていただけますか。」 私はできる限り事細かくドクターに説明を始めた。 正直、恥ずかしい説明ではある。 だけど、このドクターならちゃんと向き合ってくれる気がした。 ひと通り話を終えるとドクターが何度か頷いた。 ドクター「分かりやすい説明をありがとう。なるほど。ん、結論から言えば、おそらく心配する必要はないだろう。だけど……万が一ってこともある。ん、一応、ひと通り検査はしておこう。腹部のMRIも撮らせてもらいたいんだが……」 梨乃「分かりました。大丈夫です。お願いします。」 被せるようにそう答えればドクターがふっと笑う。 その意味深な笑みが少し気になった。 (…気のせいかな……) ドクター「いい返事だ。ん、準備しよう…」 ドクターが内線で看護師を呼ぶとすぐにその年配の女性はやってきた。 そして私を見ると驚いたような目で、 看護師「…え……あら……先生……まぁ……」 一体どういう反応なのだろう。 婦人科に高校生なんかが来てという反応といったところだろうか。 それともまた違った意味だろうか。 ドクター「…藤沢…梨乃さんです。」 いきなり紹介などされたものだから、とりあえず挨拶をと頭を下げれば看護師さんもまたふっと笑う。 看護師「そうでしたか。承知しました。梨乃さん、お久しぶりです……と言っても覚えていませんよね。ふふっ……まぁ、こんなに大きくなられて…さぁ、こちらへ……」 どうやら以前にこの人と私は会っている? 梨乃「あの……私……どちらかで?」 するとその看護師さんから思わぬ過去(こと)を聞かされて――
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