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根本「…お迎えね……」
話を終えただろう彼がドクターとともにやってくる。
ドクター「お待たせしたね。」
そう言ってドクターは笑みを浮かべながら彼の方へ目を向けた。
ドクター「彼に薬を持たせている。痛みは次第に薄れていくとは思うが一応ね。」
見れば彼の手には薬の入った紙袋。
それはおそらく鎮痛剤。
梨乃「ありがとうございます。あ……そういえば……」
近くにある時計を見れば20時を越えている。
河合に事前に貰っていた鎮痛剤を飲んだのは確か授業が終わった頃。
そうなるとそろそろ効果が薄れてくるはずのようだが――…
梨乃「…もしかしたら落ち着いた……かも……」
ボソリとそう呟くとドクターが笑った。
ドクター「ん、そうか、良かった。でも一応持ってるといい。また同じようなことがあってもいけないしね…クスッ…」
笑うドクターの傍で根本さんもまたふふっと笑った。
さすがにゆうちゃんも恥ずかしかったのだろうか。
ふっと顔を逸らす。
そんな彼の様子を見ていると根本さんが私の元へきて耳打ちする。
根本「…あんな表情もするのね……祐さん。ふふっ……可愛いわよね。」
祐「…ね…根本さんっ……」
彼は地獄耳。
その耳打ちした台詞が聞こえたのだろう。
すぐに反応を示した。
こんな彼を見るのは初めてだ。
可愛いなどと言われたら、さすがに恥ずかしさを覚えたのか。
祐「…さ、梨乃、もう遅い。帰ろう。」
これ以上、羞恥の場に晒されたくないのだろう。
私を浚うようにして引き寄せた彼。
そして、二人に向き直ると一礼する。
祐「時間をとっていただき有難うございました。大変お騒がせしました。」
彼の隣で私もまた頭を下げる。
ドクター「また何かあったらどうぞ。坊ちゃんの為ならいつでも時間をつくりますから。」
もうこんな恥ずかしいことでここに来るのはできれば控えたい。
根本「あら、それなら次はお二人にお子さんができた時ですよ。その日もそんなに遠くはないんじゃないかしら?ね?祐さん?」
祐「…っ……」
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