二人の出逢い

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なるほどといった様な表情でドクターが頷く。 完全にドクターと根本さんにゆうちゃんは揶揄われているようだ。 でも……ゆうちゃんと私の子供? いずれ……そんな日がくればいいとは思う。 けれど、まだ完全な交わりがない私たちにそんな日がくるのだろうか。 祐「いえ……まだ梨乃は学生ですし、それはまだ先になるかと……」 やはりそこは現実的ではないと捉えたのだろう。 彼は冷静にそう答えた。 だけど――…… 根本「いいえ。そんなことは言い切れないでしょう?人生なんて何があるか分かりませんもの。」 それはそうかもしれない。 こうやって今、一緒に時間(トキ)を刻んでいるけれど、いつ何が起こるかなんて分からないのだ。 私たちが逆らえないような何か大きなチカラによって引き裂かれる可能性だって0ではない。 だからこそ、その一瞬を大事に過ごしていかなければならない。 彼との時間を――…… そっと見上げれば彼と視線が合った。 梨乃「…ゆうちゃん……心配かけてごめんなさい。」 これからはできるだけ我儘は言わないようにしよう。 そして、彼の言うように焦らずに愛を育んでいくことを私は決めた。 祐「…ん、俺こそごめん。梨乃の気持ちを考えずに……」 気がつけば私は彼の腕の中にいた。 彼のその体温と心臓の音が私を安心させる。 梨乃「…ゆうちゃん……大好き……」 自然とそんな台詞(セリフ)を口にすれば彼も応える。 祐「そう?でも俺の方が梨乃を好きだと思うけど?…クスッ…」 そう言って彼はそっと私の額にキスを落とす。 視線を交わせば彼が私を愛おしそうに見つめている。 その瞳が私を酔わせることなんて簡単なこと。 彼の背中に腕を回せば、その瞳に吸い寄せられるようにしてキスを求めてしまう。 梨乃「…ゆうちゃん……」 ゆっくりと目を閉じて彼に身を委ねたその時だった。 ゴホンッとひとつ咳払いが聴こえた。
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