記憶の断片

2/6

34人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
生徒会室の鍵を閉めるとともにチャイムが鳴った。 週明けの月曜日━━━ 今朝も生徒会室で総会の準備。 少しだけ進める予定が思いのほか時間を要してしまった。 気づけば朝のHRが始まる時間帯。 梨乃「急がなきゃ…」 総会目前ということもあり担任には事前にこういったことがあるかもしれないと話してはいる。 だが、あまり特別扱いは良くない。 少しでも早く教室へ。 そう思いながら向かった時、曲がったその先で思わぬ人と遭遇した。 河合「ん?あれ?会長?どうした?珍しいな。遅刻か?」 足早に私の元へと近寄ってくる河合は陸上部の顧問。 そして私の婚約者のゆうちゃんの高校の時の先輩である。 梨乃「総会の準備で少し時間がかかってしまって…」 河合「あぁ、そーいや今週だったな。ご苦労なこった。」 興味がないのか何なのか。 この河合という教師はとにかく聖職者と呼ぶにはふさわしくない。 河合「んなもんテキトーでいいんじゃねぇの?相変わらずクソ真面目なんだな。クッ…」 何故こんな人が教師になれたのか。 いまだに不思議である。 日本の文科省というものは一体どうなっているのか。 梨乃「適当というわけにはいきません。学校生活をより良くするものですから。」 河合「へぇ。まぁいいや。それより……あいつとは仲良くやってんのかよ?」 河合は私とゆうちゃんの関係を知っている。 そして最近婚約したという事実も。 梨乃「おかげさまで。」 河合「ふぅん。良かったじゃん。けどなんか冴えねー顔してるように思えんだけど?」 河合には何もかもお見通しなのだろうか。 恋愛のことだけでいえば、私は河合を尊敬している。 それはなぜか。 そう。 河合は私にとって恋愛の師匠とも言うべき存在だから。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加