記憶の断片

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河合「…やっぱりな。…フッ…」 勝ち誇ったように笑みを浮かべた河合。 学校では私的なことを顔に出さないように気をつけてはいる。 しかし、河合にかかれば私の些細な違和感など見抜かれてしまう。 河合「で、何があった?ん…またレクチャーしてやろうか?」 その言葉に週末のことが蘇る。 彼とのあの大人の情事――― 何度も私を絶頂に上り詰めさせる彼は大人の男。 全てを忘れさせるほどの快楽を与え続ける彼はテクニシャン。 だけど――― 気づけば河合が私の顔をニヤニヤと覗き込んでいる。 梨乃「…っ…ち…近いです。」 その至近距離に慌てて後ずさりすれば河合がクククッと笑う。 河合「ホント会長っておもしれーな。まぁ、一人で悩むのはほどほどにしておいてだな。ん、溜め込まねー方がいいぞ?ははっ」 本当いうとこの恋愛の達人ともいうべき人に相談をしたい。 とはいえ、あんな悩みをどう説明すれば良いのか。 しかもここは学校。 こんな場所であんな卑猥な話をすべきではない。 河合「ま、ここではな。ん、気が向いたらいつでもうちに来いよ。また飯でも食いながら話してもいいし。」 そんなことをすればすぐにゆうちゃんが駆けつけてくるだろう。 以前、GPSを外し、SPを撒いて河合の自宅へ行ったことがあったのが、後でとんでもない目にあった。 でも、そのことがあったから私は今、ゆうちゃんと婚約できたようなものだけど。 梨乃「切羽詰まったらお願いします。」 河合「切羽……そんなこと言ってたら手遅れになるぞ?全ては早い方がいい。」 そう言われてハッと気づいた。 こんなところでこんな話をしている場合じゃない。 既にHRは始まっている。 早く教室へ向かわなければ。 梨乃「そうですね。では、私はこれで失礼します。」 サッと頭を下げると私はその場を駆けだした。 河合「…あ、おいっ……ちょ…まだ話がっ…」 この時、河合が言おうとしていたコト。 それが今後の学校生活を左右する重大なことであることなどこの時の私は知る由もなかった。
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