記憶の断片

5/6

34人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
そして私の足は教室へ。 後方のドアへ手を伸ばしたその時だった。 ガラス越しに教室の中を見れば、担任の隣に男子生徒が立っているのが見える。 梨乃「転校生?」 うちの制服を着ているということは転校生で間違いない。 クラスにいる記憶のないその人が教壇に立って何やら話をしている。 自己紹介でもしているのだろうか。 その度にキャーキャーと女子生徒が騒ぎだす。 その間に私は教室へと入った。 教室に入るとすぐに担任が私に気づいたようだ。 後方から担任に頭を下げると『あぁ』といった感じで頷いた。 一応、事前に遅くなるかもしれないと事情を説明していたこともあるからかすんなり入り込めた。 色めきだっている女生徒を後目に席へ向かうと奏多が早々に声を掛けてきた。 奏多「梨乃、ごめん。任せっきりで…」 梨乃「大丈夫だよ。体調どう?週末無理してない?」 奏多「全然平気だよ。ちゃんとクールダウンしてるからね。ハハッ」 週末、奏多がうちのパパとトレーニングしていることは誰も知らない。 二人にしか分からない会話を繰り広げていると、担任の声が教壇の方から聞こえた。 担任「それじゃぁ、席は成瀬の隣。おい、成瀬。面倒見てやってくれ。」 奏多「え……あ…はい。」 転校生の席はどうやら奏多の隣のようだ。 席替えをし、私たちは後方。 奏多は私の席の後ろ、その隣に転校生ということになる。 担任に指示され、転校生がこちらの方へとやってくる。 その間に私は荷物を片付け、一限の準備に取り掛かる。 とその時だった━━━ 転校生「Rino?」
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加