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奏多「分かった。じゃぁ、俺が近くにいるよ。」
梨乃「…え?」
奏多「俺じゃそんな頼りにならないかもしれないけどさ。もし梨乃が追い込まれたとしても、俺なら思いつくことや言えることもあるかもしれないし。」
梨乃「でも、迷惑じゃ…」
奏多「そんなわけないだろ。それを言うなら俺なんか藤沢選手にどれだけ世話になってると思ってんだよ。」
週末、うまい飯を食わせてもらった上、陸上界にいれば輝かしい栄光を掴んだだろう元大リーガーに指導をしてもらったということから考えれば、こんなことは大したことない。
梨乃「でも、あれはパパのエゴみたいなもんでしょ?」
奏多「だとしても、俺は感謝してる。梨乃が友達だからこそだよ。それにここで梨乃の役に立たなきゃいつ立てるかっていうんだよ。生徒会のことも頼りきりだしさ。うん、一番の親友が困ってんだ。頼ってよ?ていうか、頼って欲しいんだ。」
梨乃「…奏多……」
彼女は何かを考えているようだった。
そして、暫くすると頷き、俺を見据えて、
梨乃「ん、昼休みに話すよ。ごめん。申し訳ないんだけど、彼、生徒会室に連れてきてもらえるかな?私から声を掛けるのはどうかなって。」
俺は即答した。
奏多「了解。連れていく。」
その後、俺は彼女から転校生「アレク」と彼女との間柄の説明を受けた。
教室へ戻るとともに一限を知らせるチャイムが鳴った。
案の定、転校生「アレク」は女子達に囲われている。
梨乃が戻ってくるのが見えるとアレクはまたもや声を掛けようとした。
そこへ一限担当の教師が入ってくる。
担当教師「はい、座れー!授業始めるぞー!」
タイミングを計って教室へ戻ってきたのがうまくいった。
とにかく昼休みまでの休み時間は彼女に近づけさせないのが俺の役目。
余計なことを口にさせてはいけない。
だが、この調子だと女子がアレクを離してくれないだろう。
俺の出る幕はそうなさそうにも思える。
でも、いつ何を口にするか分からないこの男を見張る必要はある。
彼女の後ろ姿を見据えるアレクを警戒しつつ、俺はその瞬間を待つのだった。
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