忌まわしき思い出

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忙しくも穏やかな日々を過ごしていたはずだった。 幼い頃から好きだった『ゆうちゃん』と晴れて婚約をし、後は渡米までの日々を彼とともに過ごすだけだと思っていた。 そんな矢先に降って湧いてきたあいつ。 『アレクサンダー・アムールスキー』 ロシア人の祖父をもつアメリカ人と日本人の間に生まれた彼はクォーター。 その見た目はどちらかといえばロシア人の祖父を受け継いだよう。 とてもじゃないが高校生には見えないほどに大人びた風格。 彼とはキンダーガーデン、いわゆる日本でいう幼稚園の頃に出逢った。 当時から冷めたところがあった私にとってキンダーはとにかくつまらない場所だった。 同年代の友達をとパパやママが心配して行かせたとのことだが、とにかく私は毎日早く帰りたかった。 パパはよく遠征に行っていたということもあり、お迎えはママ。 と思いきや、慣れない場所は危険だろうと、当時その近くに住んでいたゆうちゃんが送り迎え役をかって出てくれた。 キンダーへ行けばゆうちゃんに会える――― ただそれだけの理由で私はキンダーへ行くことを決めた。 だが、そこは苦痛の場所でしかなかった。
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