忌まわしき思い出

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あの日のことなどすっかり忘れていた。 嫌な思い出など残せるほど私の頭に容量(キャパ)は持ち合わせていない。 だからできるだけ、いらないものはその都度処理してきたつもりだった。 ところが、その欠片(カケラ)が残っていたようだ。 目の前にアレクが現れた今、その欠片が過去を手繰り寄せる。 忌々しい思い出など必要ないのに。 できることなら関わりたくはない。 だけど、何の巡り合わせかアレクと再会してしまった。 今すべきこと。 それは私の今のこの平穏な生活を守ることのみ。 ならば、することは決まっている。 生徒会室の向こうから足音が聴こえてくる――… 微かに聴こえる会話からそれは奏多とアレクで間違いない。 ここは私のテリトリー。 アレクになど領域を侵されてはならない。 ふぅっと深呼吸ひとつする。 戦闘態勢は整えられた。 大切な『今』を守ってみせる―――…
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