fib

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着替えを済ませ、運動場へ向かうとゆうちゃんが部員の様子を眺めていた。 私が呼ばれた理由。 それはもちろんゆうちゃんのサポート。 河合曰く、大会前ということでメンタルをやられている部員が結構いるとか。 河合一人ではキツいとのことでゆうちゃんにヘルプを出したという。 祐「あぁ、藤沢さん、申し訳ないね。ん、ちょっとこのメジャー持っててくれるかな。」 彼は他の生徒たちの前では私のことを『藤沢さん』とか『会長さん』と呼ぶ。 梨乃「はい。」 そう言って手を差し出すとその指が触れた。 バインダーに手をかけるその手に目をやれば、そのしなやかな指が週末の甘い夜を思い出させる。 (学校でこんなこと思い出すなんて…っ…) 生徒会長たるものがこんなことではいけない。 思わず、その指先から目を背ければ、 祐「…どうしたの?…クスッ…」 そう言って彼が私を覗き込んでくる。 梨乃「…あ…別に何も……えっと虫がいたような気がして…」 まるでさっきまで飛んでいた虫を追うかのような仕草で私は誤魔化した。 祐「…虫?……虫ねぇ…そっか、虫がいたか。でも会長さんの目に留まる虫も光栄というもの。ん……けど……悪い虫には気をつけないといけないよ?…クスッ…」 と、その瞬間(トキ)だった。 体育館の方からやけに騒がしい声が聴こえてくる。 何事かと見ればそこにはまたもやバスケ部男子。 その中に一際目立っている長身の男子生徒はアレク。 そんなアレクに女子生徒が群がっている。 祐「…聞いたよ。先輩に。転校生だって?」 !?
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