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部屋に着くとドアを閉めるやいなや、ママが申し訳なさそうな顔を見せた。
愛梨「ごめんね、梨乃。突然だったからビックリしたでしょ?」
今日は朝から驚いてばかりである。
まさか、ゆうちゃんが出張から帰ってきてこんなにもすぐに実家へ引き戻されるとは思ってもみなかった。
しかも、憂鬱な訪問者のせいで━━…
梨乃「うん。いいよ。仕方ないよ。でも、いきなり過ぎ。そういうことはもっと早くに……」
愛梨「ごめんね。今年に入ってすぐだったの。ほら、年末年始は忙しかったから忘れちゃってて……」
旅館業は年末年始忙しいものである。
とはいえ、そんな大事な人が来ることを忘れていたなんてさすがママである。
梨乃「そうなんだ……あ、で、今日は顔出す程度でいいんだよね?」
愛梨「いいわよ。梨乃は忙しいもの。それにアレク苦手だもんね…クスッ…」
そう言って苦笑いのママ。
(なんだ……分かっているじゃない……だったら挨拶だけして適当な理由つければすぐに帰れそう……それに紳士的なマイク選手なら無理に引き止めることはしないだろうし……)
梨乃「じゃぁ、作り過ぎた夕飯は貰って帰る。で、ゆうちゃんと食べる。」
愛梨「そうなのよ~。またやっちゃったの。計算苦手なのよ、ママ。あ、いっぱい持って帰って?ふふっ…」
いつになったらママは適量というものを覚えるのだろうか。
でも、ママの料理はどれをとっても美味しいから問題ない。
どうせ、アレクがいたら食欲なんて低下する。
それなら貰って帰ってゆうちゃんと一緒に食べる方が同じ料理でも断然美味しい。
梨乃「任せて。食べるのは得意だから。」
愛梨「そうね。じゃ、先に降りるから。…あっ……チャイム……は~い!」
アレク達が来たようだ。
緊張が走った―――…
(…平常心……平常心……)
そう言い聞かせ、私はママとともに玄関へと向かった。
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