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車は私たちのいるマンションの目の前に停まった。
暫くすると運転席からよく知るその人が颯爽と出てくる。
気がついたのだろう。
私と目が合うとフッと笑みを浮かべ頭を下げた。
と同時に私もまたその人に頭を下げる。
そして後方へと回り、車のドアを開けると同時に『その人』が現れる。
切れ長の涼しい顔をしたその人の瞳に私が捕らえられるのは早かった。
梨乃「ゆう…ちゃん…」
手にしていた自転車を素早く止めると私は彼の元へと駆けだした。
引き寄せられるかのようにして彼の元へ向かえば彼が私を受け入れてくれた。
祐「ただいま、梨乃。」
たった一週間離れていただけなのに伝わるその温もりは懐かしさを感じる。
温もりを確かめるように埋めた顔を胸に擦り付けるようにすれば彼がそっと頭を撫でてくれた。
祐「まったく、甘えん坊だな。そんなに淋しかったの?」
梨乃「…うん、淋しかった……」
祐「…そっか……じゃ、後でゆっくりその淋しさを埋めてあげなきゃいけないな…クスッ…」
そう言って私の額にキスを落としたその瞬間だった。
力「…おまえさぁ……場所考えろよっ……」
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