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その目が本気で疑っているわけではないことくらい理解っている。
ゆうちゃんは私がアレクのことを苦手ということは一番知っているはずなのに……イジワルだ。
梨乃「…どうしてそんなこと言うの?梨乃はゆうちゃんだけなのに…」
そう言って少し拗ねて見せると、すぐさま彼が私を抱きよせた。
梨乃「……ゆうちゃん……」
祐「…分かってるよ。ん、ちょっと揶揄ってみたくなっただけだよ。梨乃には俺がいる。でも……無防備だったね。あぁ……少し遅いから見にきてみたんだ。そしたらリビングにアレクがいないからもしかしたらって…」
いつの間に彼は家にやってきたのだろう。
梨乃「…ぁ…心配してくれたの?」
祐「当然だよ。大事な婚約者の身に何かあったらいけないからね。…ん……現にちょっと危なかったのかな?…にしても相変わらずだなぁ、アレクは……クスッ…」
何が相変わらずなのかは理解らない。
だけど、今はそんなことどうでもいい。
ゆうちゃんが私を心配してくれていたことが嬉しい。
梨乃「あ…でも、ゆうちゃんうちに来て大丈夫だったの?」
ゆうちゃんとの関係はマイクたちには説明していない。
祐「あぁ、実はね、マイクとは梨乃のパパを介してロスで一度会ったことがあるんだ。この際だから顔出しておくよ。あ、もちろん、俺と梨乃との関係は内緒にしておくけどね…クスッ…」
どういう風に説明するのか分からない。
でも、きっとゆうちゃんに任せておけば大丈夫なはず。
梨乃「あ、ゆうちゃん、あのね。アレク、ゆうちゃんが学校に来てるの知ってて……」
祐「ん、大丈夫。梨乃は心配しなくていい。俺に考えがあるから。さ、梨乃は先にマンションに戻って。あぁ、裏に小笠原を待機させてるから。」
梨乃「え……小笠原さんが?」
祐「一人で帰すなんてできないよ。悪い『虫』がついちゃ困るからね…クスッ…」
そう言えば、陸上部の手伝いの際にも同じようなことを言っていたような。
もしかして、あの時からゆうちゃんはアレクのことを警戒していたのだろうか。
祐「じゃ、下に行って挨拶してくるよ。すぐに俺も戻るから……」
そう言って私の額に軽くキスを落とした。
梨乃「…ゆうちゃん……」
祐「続きはまた後で……ん、お利口で待ってたらご褒美あげるから……クスッ…」
もしや、それはアノ続きだろうか。
妖しく妖艶な笑みを残しながら部屋を後にする彼を見つめながら、私は胸の高鳴りを抑えることができなかった。
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