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お風呂から上がると彼が帰宅していた。
梨乃「…あ…ゆうちゃん、お帰りなさい。」
今しがた帰ったのだろう。
ちょうど彼はネクタイを緩めるところだった。
祐「あぁ、梨乃、遅くなったね。ごめん、もう少し早く切り上げたかったんだけど、話が盛り上がってしまってね。ん、食事は軽く済ませてる。でも、ちょっと話し過ぎてお腹空いたかな。俺も風呂入ってくるよ。出たらちょっと晩酌付き合ってくれる?」
読みは的中か。
事前に用意していたものが役立ちそうだ。
梨乃「もちろんだよ。あ、お風呂、今ちょうどいい感じだから…」
そう言って彼の元へ向かって行くと、スッとその手が私を引き寄せた。
祐「…いいにおいだ……もう少し早ければ一緒に入れたのに……うん、残念…」
疲れているのだろうか。
こんな風に彼が私の肩に寄り掛かることなどあまりない。
もしかして相当神経のすり減るような会話をしたのだろうか。
梨乃「…あ……ごめんね。えっと、ちゃんと美味しいもの用意して待ってる。だからゆうちゃん、早くお風呂入ってきてゆっくりしよ?」
彼の疲れを癒してあげるのは私の役目だ。
その使命感からそんな台詞を口にすると、彼はもたれていたそのカラダを起こして、
祐「…美味しいもの……ね……そうだね。美味しく今夜もいただかなきゃだ…クスッ…」
ドキリとさせるその妖しい瞳。
その言葉の意味がどういうことなのか理解るほど、私はもう大人だ。
気づけば、私自身の頬に火照りが感じられる。
祐「…楽しみだな……」
そう言って、私の頬にキスをすると、彼は頭をくしゃりと撫でてバスルームへと向かっていった。
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