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その声の方へ振り返ると、そこにはパパとママ。
祐「あれ?力……どうしたの?」
力「どうしたじゃねーわ。つか、ちったぁ、場所考えろよ!こんな場所で誰かに見られたらどうすんだよっ」
久しぶりの彼との再会に私としたことが我を忘れてしまっていた。
彼は大泉グループという大企業のトップ。
何かと注目される時の人。
そんな彼とは親子ほどの年齢差だが私たちは愛し合っている。
そしてつい最近、反対し続けていたパパに許しを得て婚約したばかり。
だが私と彼の関係は世間にはまだ公表していない。
それは私がまだ未成年であり高校生ということもあるから。
しかも私は元大リーガーの娘。
その事実でさえも身近な人にしか知らせていないというのに、これが公になれば今の穏やかな生活が一変してしまう。
できるだけ特別な目で見られることなく普通の高校生活を過ごしたい。
何より彼との婚約よりもパパが超有名人であることを知られたくない。
我に返った私は急いで彼の腕の中から飛び出そうとした。
ところが寸でのところで彼にまたもや引き寄せられてしまう。
祐「俺は別にバレてもいいんだけどな。ん、梨乃は俺とのこと公になるのは嫌?」
そう言ってくいっと顎を持ち上げる。
そこには全てを飲み込むような怪しい瞳。
抵抗なんてさせてもらえないその瞳にいつの間にか私はまた捕らえられている。
梨乃「…そ…そんなこと……」
祐「じゃ、いっそのこと公表しちゃおうよ。俺は世界中の人に今すぐに言いたい。梨乃は俺のものだってね。ん、いいよね?」
梨乃「えっ…ぁ……今すぐって……あの、でも…その、パパのことは私知られたくないよ…」
公表すればきっとすぐにパパが元大リーガーの藤沢力だとバレてしまう。
祐「パパって……そんなに力が父親だってこと隠したいの?んー…そっか……困ったなぁ……。父親がネックとはね……」
そう言って意味深な顔を彼はパパに向ける。
力「は?俺がネックとか意味分かんねーわ。つか、俺が親で何が悪いんだよ。俺は別に恥ずかしい経歴とかあるわけじゃねーし?どちらかといえば良い経歴だろーよ。」
祐「んーでも、力がそんな経歴の持ち主だから梨乃が俺たちの仲を公表したくないってのは事実だろ?ネック以外の何ものでもないよ。あー…力が梨乃の父親じゃなかったらこんなコソコソしなくて済んだのにさぁ、どうしてくれるんだよ?ねぇ、梨乃?」
力「あ?なら婚約破棄したっていいんだぞ?つか、俺は仕方なくおまえらのこと認めたわけだし?」
そんな言い合う二人の間に入ってきたのはママ。
愛梨「…ふふっ…楽しそう。あ、梨乃?これ昨日一緒に作ったローストビーフ。いい具合に出来上がってたからもってきたの。食べるでしょ?」
そう言って手に持っていた包を私に手渡すママはさすがとしか言い様がない。
梨乃「あ、うん。いただく。これで夕飯一品増えるし助かる。ありがとう、ママ。」
愛梨「どういたしまして。ん、久しぶりだし二人水入らずでゆっくり過ごしなさい?あ、やだ。もうこんな時間。早く帰らなきゃ。お義母さんに任せきりになっちゃう。じゃ、私たちは帰るから。」
気づけば強引にママがパパの腕を取り来た道を行こうとしている。
力「え?愛梨?ちょ……俺は奏多とマンションで飯をだなぁ!」
愛梨「何言ってるの?奏多君のご飯はうちに用意してあるんだから。あ、奏多君、一緒に行きましょ。今日もたくさん作っちゃったからいっぱい食べてね?ふふっ…」
相変わらずのママに圧倒された奏多は苦笑い。
奏多「じゃ、俺はこれで。大泉さん、失礼します。」
祐「あぁ、いつも梨乃がすまないね。ん、ありがとう。」
奏多「いえ……じゃ、梨乃、大泉さんと仲良くな?」
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