34人が本棚に入れています
本棚に追加
カラダを少し動かした瞬間、その痛みが襲ってきた。
そのちょっとした私の違和感を彼が見逃すわけがない。
祐「…やっぱりまだ痛むのか……ん……今日は休んだ方が……」
梨乃「…行く……今日は行かなきゃいけないから…」
こんな痛み、そのうち引くはずである。
自然治癒力というものを私は案外信じている。
祐「…心配だな………ん、けど本当に辛い時は連絡して。すぐに迎えにくるから。いや、何ならこれから病院に……」
梨乃「…いい……ん、大丈夫だから。大したことない。あ、着いた?」
車が停車したようだ。
執事の小笠原さんが後方席の方へ回り込むとドアを開けてくれた。
この瞬間が勝負か━━
梨乃「じゃ、ゆうちゃん行ってくるね。ありがとう。じゃ……」
そう言ってそそくさと車の外へ出ようとした瞬間―――…
…―――ズキ―ッ…―――…
またもや、アノ痛みが走った。
思わず、足が止めそうになった私だった。
だけど、そこは必死で堪えた。
祐「…梨乃っ……やっぱり……」
梨乃「小笠原さん、行ってきます。夕方にまたお願いします。」
その甘い痛みを引き摺るようにして、私はその先の角を曲がった。
最初のコメントを投稿しよう!