待ち焦がれた瞬間

9/12

34人が本棚に入れています
本棚に追加
/321ページ
久しぶりに彼のいる部屋。 彼が出張で居なかった間、極力実家で過ごすように言われていた為、部屋は片付いている。 祐「約束ちゃんと守ってくれてたようだね。やっぱり一人にしておくと心配だからね。」 相変わらず私にはGPSとSPを付けてはいるものの、出張中は基本的に実家で寝泊まりするよう言われていた。 その間、マンションと実家への行き来の送り迎えはパパが担当。 梨乃「ゆうちゃん、心配し過ぎだよ。私、もう大人なのに…」 ママから渡してもらったローストビーフの入った包をもってキッチンへ向かおうとすると彼がスッと私を背後から抱き締める。 祐「大人……か……だったら今夜は大人の癒し方で俺を癒して欲しいな…」 肩越しに私を見つめる彼と目が合うとどちらからともなくキスを交わす。 梨乃「…ゆう…ちゃ……んっ……」 次第に深くなるキス━━━ 思わず手にしていた包みを落としそうになり焦って目をやると彼もまた気づき、それに手を添えた。 祐「…おっと……せっかくのローストビーフを台無しにしちゃいけないか…クスッ…」 と同時にタイミング良いのか悪いのか、私のお腹がぐぅっと鳴り雰囲気は一転。 帰ってきて早々、色気のない出迎えをしてしまったことが恥ずかしい。 祐「…あぁ、そうだね。ん、もうこんな時間だしまずは腹ごしらえかな…ハハッ…」 手に持っていた包を取り上げると彼がキッチンへと置いた。 祐「…着替えてくるよ。」 そう言って私の額にキスを軽く落とす。 そしてネクタイを緩ませ、妖しい笑みを残しながら彼は自室へと向かっていくのだった。
/321ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加