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トイレを出てすぐ歩いたところの壁際に、なんと河合が寄り掛かっていた。
梨乃「…え……」
まさかこんな人気のないところに教師がいるとは。
しかも、職員室や教官室からかなり離れている。
特別室も近くにあるわけでもないし、河合がここにいるのはどう考えたって不自然だ。
河合「マヌケな顔してんな……ハハッ…」
よほど驚いた顔を見せてしまっていたのだろう。
梨乃「余計なお世話です。ただ少し驚いただけで……」
河合「そっか。鉄仮面被ったような会長でもそんな顔すんだな…クククッ…で?」
揶揄ったと思えば、いきなり真剣な顔になる河合。
梨乃「…あ……薬は効いてます。予備は次の休み時間あたりに飲もうかと…」
河合「そっか。まぁ、効いてんならいい。ん、今日はできるだけ早く帰れ。明日のこともあるだろうし?早く休んだ方がいい……」
河合はおそらく朝の私を見て心配して様子を伺いにきてくれたのだろう。
なんやかんや言っても河合は悪い人ではない。
教師として少し問題はあるが━━━
梨乃「そうですね。そうします。ん…これ以上悪化しても困るんで…」
明日は総会。
無理をして出血量が増えて全校生徒の前で出血多量で倒れるといった惨事にならない為にもこの状態を何とかしないといけない。
私にとって初めての体験。
場合によったらママに相談するのが良いかもしれない?!
帰りに寄って止血方法などあるか聞いてみようか。
ママも女性だからきっとそういった経験をしているはず。
(…うん……それがいい……そうしよう……)
そんなことを考えていると河合が、
河合「…悪化……まぁ、悪化はねーだろ。じき治まると思うぞ?ん、何なら俺がチェックしてやろうか?…クククッ…」
完全に教師として失格な発言である。
梨乃「丁重にお断りします。」
河合「…遠慮しなくてもいいのに……ククッ…まぁ、また何かあったらいつでも来いよ?じゃーなっ。」
そう言って何事も無かったように河合は近くの階段を下りていく―――
梨乃「…有難うございます。先生……」
その背中を見ながら私は感謝の言葉を呟いた。
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