declaration

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そのアレクの質問に俺は言葉を失っていた。 アレク「…Rinoと……付き合っているんだよね?」 まさか、そんなことを俺に聞いてくるなど思いもしなかった。 その情報はトップシークレットのはず。 大泉さんと婚約しているその事実はよほどの関係でない限り知らされていないのだが。 彼女が自分で言ったのだろうか。 だけど、そんなこと彼女から聞いてなどいない。 もしや、俺にカマをかけているのだろうか。 だとしたら、下手な台詞(セリフ)は発するわけにはいかない。 アレク「周りの目を誤魔化すことができても俺は誤魔化せないよ。」 アレクが梨乃のことを想っていることは知っている。 告白されたようなことをも聞いてはいる。 そして梨乃が相手にしなかったということも。 奏多「…梨乃が言っていたのか?」 大泉さんという絶対に敵わない相手だとしてもやはり諦めきれないのだろうか。 それほどにまで好きだったからこそ日本に来たのだろうアレク。 その気持ちは分からないでもないが、相手が悪過ぎる。 アレク「いや……Rinoは言わないよ。でも見ていれば分かる。」 アレクは梨乃の実家(うち)の旅館にホームステイしている。 歓迎会のようなものを開いたとは聞いたが、それ以外で家で彼女と接していないはずだが。 もしや、大泉さんと一緒にいるところを見られてしまったのだろうか。 親密な関係を見たからこそ、こんなことを聞いてくるとしか思えない。 となると、これは見過ごせない。 ヘタにアレクがその事実(こと)を口にしてしまう前に口封じを何とかしなければ不味い気がする。 梨乃は自分の父親のことでさえ、この学校の生徒には話していない。 まして大泉グループのCEOと婚約者なんて。 その事実を知られないようにこれまでやってきた彼女。 この事実が公になれば大変なことになる。 奏多「…だとしても、それは彼女自身のこと。梨乃が口にしていないのにそれを君が口にするのは違うと俺は思うよ。」 俺は梨乃と大泉さんの関係を知っているから聞いても問題ない。 だが、こういう類の(こと)は長閑で退屈な田舎の人間にしてみれば、最高にヒマ潰しとなる。 彼女以外の口からそれを広げ、面白おかしく騒ぎたてて欲しくない。 奏多「俺の口からはなんとも言えない。彼女を想うなら彼女が公言するまで何も言わないでもらいたい。」 これは親友としてのお願いだ。 彼女が望む穏やかな学校生活を俺は送ってもらいたい。 ささやかなその願いを誰かに壊す権利などないはずだ。 と、次の瞬間、思わぬ台詞(セリフ)が飛んだ。 アレク「…kanata……君って案外、chickenなんだな?」 !?
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