第二章

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フィーネがまとめてくれた素材を持ち、宿の地下へと足を踏み入れる。祭りのせいか、この時間帯はあまり人がおらず、ちょうど良かったとすぐさま武具屋のカウンターへと向かった。どすっと音を立てて袋を置き、ふぅと息をつく。 結構、重たかったな… 「すみません、換金をお願いしたいのですが。」 「おう、いらっしゃい…って子供じゃねーか。ちゃんと金になるもん入ってるんだろうな?」 じろりと睨まれ、ここでも子供はダメだったかと頬を掻く。せめて俺にもう少し身長があれば、また違ったのかもしれないが…。 頼むから早く来いよ、成長期… 「…えっと、頼まれたんです。これを持っていてお金を貰って来て欲しいって。」 俺の言葉を聞き、袋に手を掛けた店主は、即座にその目の色を変える。 「ほう。ウルフとベアーの毛皮に爪…ボアの肉もあんのか。大量じゃねぇか。よくこんなに狩ったな。」 「運ぶの、大変でした…」 次々と素材を出し、品質を確かめるようにして触る店主を目に、頭の中でフィーネへと声をかける。 (そういえば、フィーネ。換金したお金、少し使っても大丈夫?ナイフの刃がちょっと…) [もちろんです。そもそもそれはディル様のお金ですよ?私の許可なんて必要ありませんから。] (え、でもゲート使わせてくれてるし、戦闘も俺一人でやった訳じゃ…) [私こっちじゃ姿が見えないんですよ?どうやってお金を使えと?] (…あ。えっと、じゃあ…欲しいものがあったらなんでも言ってね?) [ふふっ。了解致しました。] 「まあ、こんだけありゃ確かに子供には大仕事だろうな。けど、きっと祭り用に小遣いでも貰えんだろ。頑張ったお前に、ちょっと色付けといてやるわ。」 「えっと、ありがとうございます。後もう一つお願いがありまして…」 「ん?なんだ、まだなんか頼まれてんのか。」 怪訝そうに皺を寄せる店主に、苦笑いで返す。 「斬れ味の良いナイフが欲しいそうなんです。なんでも、魔物相手に使うんだとか…」 「ほう。って事は多分、素材を剥ぐのに使うんだろうな。こんだけ狩れるなら、そりゃ斬れ味も悪くなるだろうよ。ちっと待ってな。良さげなやつ幾つか持ってきてやるわ。」 ー 「さて、待たせた。魔物相手ならこの二つがオススメだな。金額についてはなんか言われてるか?」 並べられたナイフを目に思考する。長さ的にはどちらもちょうど良く、今使っているものよりも少し長いくらいだろう。 問題は重さと斬れ味だが、流石に持たせて試させて下さいとは言えない為、どうしたものかと頭を悩ませる。 「いえ。ただ、長く使えて斬れる物の方が良いと。」 「ふーむ。買い物まで子供に任せるとは、随分な大人と一緒にいんのな。ぼったくられる心配はしてないのかねぇ。」 「ぼったくるつもりなんですか?」 「…いや、子供相手なら騙せる確証がある分、逆にぼったくりにくいんだよ。やった後の罪悪感がな…。ま、あくまで俺の話だが。」 困ったように頭を掻く店主に、どうやらただ子供に耐性がないタイプの人間だったかと分析する。こういうのには、素直にお願いするのが一番効くだろう。ラッキーだったな。 にこりと笑みを浮かべて口を開く。 「おじさん、優しいんですね。」 「…ほら、そういう所だよ。ったく…。」 「あの、ちょっとだけ触ってみてもいいですか?」 「…持つだけだからな。」 「ありがとうございます!」 ちょろいな、なんて思ったら性格が悪いだろうか?まあ、猫を被っている時点で決して良いとは言えないのだけれど。 まず、向かって右側の方に手を伸ばした。金色に光る金属で出来たそれは、想像より重く、これだと今まで通りにナイフを振るのは難しいかもしれないなと、元の場所に戻す。 もう片方は、一般的な銀色のナイフで、持ち手のグリップの部分に、翠色の小さな石が埋め込まれているものだった。重さは丁度良い。 ふーん。これなら… […ディル様、そのナイフ…] 突然フィーネに声をかけられ、動きを止める。 (どうしたの?こっちにしようかなって思ってたんだけど…) [いえ、部屋に戻ってからお話致します。私もそちらのナイフが良いと思いますよ。斬れ味については保証致します。] ふむ。きっと何かあるのだろう。微笑む彼女を横目に口を開いた。 「おじさん、僕こっちが欲しいです!」 「…お前さん見る目あるなと言いたい所だが、使うのは別の人だろ?良いのか?」 「んー、大丈夫だと思います!」 「…ならいっか。しゃあねぇ、一割だけまけといてやる。さっきの素材の金から引いておくからな。」 この街に来て初めて思った。子供で良かったと。良い事もあれば、悪い事もあるなぁと今日の事を振り返る。もうこれ以上、何も無いことを祈るばかりだ。 ナイフを木箱に、お金を袋にまとめてくれた店主がカウンターにそれらを置く。 「そら持ってきな。転ばないように気を付けろよ。」 「はい。ありがとうございました!」 ー
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