はじまり

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はじまり

現在、人と精霊が暮らす世界 一アルカサイレー かつてこの世界は、ある者の手によって二つに分断されていた。 世界の中心…核となる部分に、“断壁”と呼ばれる目には見えない結界を発生させ、互いの世界を行き来する事を禁じていたのだ。 隔てた当人以外に互いの世界の存在を知る者すらおらず、それぞれの世界は別の運命を辿っていた。 自然と精霊が多い緑豊かな世界を“アルカ”。 人々が住みやすいよう機械技術が発展した世界を“サイレ”。 対象的な二つの世界が交わることは二度と無いとされていたはずだった。 しかし、ある日を境にそれは覆される。 後に人はそれを“世調和”と呼び、分断された二つの世界は在るべき姿を取り戻したのだった。 ー はぁと一つ息をつき、読んでいた本を閉じる。見ていたのは“アルカサイレの誕生”…所謂、この世界の歴史…に関する本だった。 両親に「少しは自分の世界の事を知っておくべきだ。」等と言われ、読み進めてはいたものの、ちっとも集中出来やしない。 「この世界が分断、ねぇ…。」 思わず、ぽつりと呟く。 集中出来ない理由は至って簡単だった。話の内容が、想像力の乏しい自分には到底理解出来るものではなく、別次元の夢物語にしか聞こえないからである。 そもそも、なぜそのある者とやらは世界を二つに分けたのだろう。特に深い意味はなく、ただ分けたかっただけなんて事はまずない。かと言って、その理由が明記されている部分などは何処にも存在しなかった。元に戻した方も然り…。 「分けて、戻す。…意味がわからないな。」 歴史と言う割には、あまりにも不明な点が多過ぎるだろうに。 現実主義な自分にとっては、こんな非現実的な話を具体的な中身も無しに実際に起こった事として受け入れるのが嫌で仕方がなかった。性分…ももちろんあるだろうが、それだけでは無い。 信じ難い事に、この“世調和”が起こったのは、自分がこの世に生を授かる少し前の話だと言うのだ。世界が分けられたの自体は何千年と前らしいが。 しかもその上、両親である父も母もこの出来事に関わっていたときた。だから二人は言ったのだ。世界を知るべきだ、と。 それならば、初めから両親が教えてくれれば良いじゃないかとは思うものの、二人はこれについて自分達の口を割るつもりはないらしい。どうやら、世間に知られているもの以外の事を口外することは、いくら身内と言えども国の機密事項なので禁止されているとのこと。 …国が関与している、大きな事例に父さんと母さんが、ね。 「本当、非現実的過ぎるってば…」 とにもかくにも、今わかっている事と言えば、二つに分けられた世界が元に戻り、精霊と共存して魔法という特殊な力を使うアルカの民と、技術を駆使して全ての動作を機械が行う街に住むサイレの民との間で論争が起きているということくらいだった。 在るべき姿とはいえ、ずっと互いの存在を知らずに真逆の生活をしていたのだ。いきなり戻って、はい仲良くしましょうね。とはいかなかったらしい。そりゃ、そうだろう。 だから、俺は受け入れたくなかったのだ。この世界で起きた事を。だって、世界を戻したのが父さんと母さんで、それが原因でアルカとサイレが揉めている、なんて。 「なんで、戻す必要があったのかな。」 ー
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